K-GO “Time to Tell” インタビュー 2

Time to Tell 各曲について

Letter To Home

──ここからはアルバムの収録曲についてお聞きします。1曲めの”Letter To Home”は、Honeydewの活動初期から大切にライヴでプレイされている曲ですね。1stアルバムの収録曲候補にも上がっていたと思いますが、今こうして正規にレコーディングされて発表されたことにつAいてどのような思いがありますか?

今作で一番楽に録れたのがこの曲かなあ。ライブでずっとやってきたので。だからこそ少しアレンジを加えたいなと思ってスライドギターをオーバーダブしてみました。深い思いと言われるともしかしたら僕らよりも応援してくれるファンの方達にとって思い入れが強い曲なのかもしれない。

──そうですね!私はこの曲に対する思い入れ凄く強いですよ(笑) ケイゴさんとじゅんこさんのダブル・ボーカル、安蒜さんの強烈なドラミングと、Honeydewの個性が凝縮されたような曲ですね?

そうかもしれません。というのもこの曲はHoneydewがNY在住時代にプロジェクトとして始めた時からあった曲なのでツインボーカルだし、安蒜くんが加わって疾走感が出ているのもあって。

──安蒜さんが加入したのは「Don’t Know Where」レコーディングのたった1か月前でしたね。安蒜さんから「Don’t Know Where」のドラムスには納得していない部分もあると聞いたことがありますが、今回のレコーディングは違ったと思います。

安蒜くんは、ファーストではHoneydewに加入して即レコーディングという形で難しい状況でした。一緒にライブ、ツアーを重ねていくうちに3人の演奏がタイトになってきた。セカンドではリベンジしたいと言ってたので今回はリベンジできたのかな、と思います。3人共に成長しました。

Fireworks

──アルバムのリーダー・トラックになった”Fireworks”はケイゴさんのメロディ・センスとロマンティシズムが発揮された名曲と思います。Honeydewの発表した曲の中でも、特にストレートでキャッチーな曲ですね。バンドの代表曲になる曲を作ろうという意図があって書かれた曲なのでしょうか?

名曲と言って頂けてうれしいです!ただ代表曲になる曲を作ろうという意図で良い曲は書けないです。きっと作曲する人は大概そうじゃないかな。この間Honeydew関連の書類とかメモ書きを整理してたら、この曲の2番の作詞メモが出てきたんですが、日付と場所が書いてあって旅行先の民家で書いたみたいです(笑)

──”Fireworks”の歌詞はケイゴさんの実体験から生まれたものですか?

実体験とフィクションが混ざった感じですかね。花火にデートに行った思い出は本当、ただそれを十代の初恋っぽく歌詞で書いているのはフィクション。書いた自分でもこんなにロマンチストだったっけ?と不思議な気持ちです。

All The Stars

──1stの”満月”同様、3曲目に収録された淳子さんのリード・ヴォーカル曲です。淳子さんのベース・プレイ、歌について1stアルバムのレコーディング時と比較して如何でしょうか?

1stより大分逞しくなりました!歌もベースも今作は凄くいいです!今作は淳子のリード・ヴォーカルが少ないのですが、逆に”All The Stars”はアルバムの大きなアクセントになってるのでハイライトのひとつです。

Powder Snow

──ここまでの3曲は、ライヴでの定番曲としてファンにはお馴染みですが、4曲め以降新しいHoneydewの世界が展開されますね。清水さんのギターをフィーチュアした”Powder Snow”は清水さんとHoneydewの音楽の相性の良さが伺えます。清水さんのギターをフィーチュアする意図で書かれた曲なのでしょうか?

Shimmyさんにプロデュース、ミックス&マスタリングを依頼した時点で何か1曲ゲストでギターを弾いてもらうつもりだったんですが、どの曲かは決めてなくて。デモを聴かせた時にこの曲を『いい曲だね』と気に入ってくれたのと、Shimmyさんのシブい大人のギターソロを弾いてもらうにはピッタリだと判断しました。そして最高の結果になりました(笑) 先ほどお話した、ブースター/フィードバッカーは、この曲のギター・ソロで使われていますよ

──ケイゴさんから見て、ギタリスト清水さんの特に凄いところは何ですか?

ギタリストとしての話であれば、ポップス、ロック、ジャズ、歌謡曲、何であれ最高のプレイをします。一般的にも有名なJ-pop歌手のバックや作品で弾いてたり、コーネリアス、オノ・ヨーコさん、世界のロックファンもご存知WilcoのNels Clineさん、The StoogesやJ.Mascis & The Fog、Minutemenなどベーシスト、レジェンドMike Wattさんと一緒にバンドやってたり、雲の上のような存在の方です。

──プロデューサー、エンジニアとしての清水さんは?

音響的な話になれば、これまた凄くて素晴らしい音質を作り出せるプロデューサー、サウンドエンジニアです。

Egyptian Wind
Highway Cowboy
Requiem

──続いて、EL-MALO柚木さんをフィーチュアした組曲的な3曲。この構成には驚かされました。「Time To Tell」はインストゥルメンタル曲が多くなりましたね?

そうですね。インストゥルメンタルは長年Chimp Beamsでやってるし、作る事自体に難しさはないんだけど1stではロックバンドとしてのアイデンティティーをストレートに出したかったので控えました。今作は、昔から大好きなEL-MALO, コーネリアスなど90年代の日本のサウンド、あとFlaming Lipsとか、けっこうガシャガシャしてる短いインスト曲とかやってみたくなりました。自分の中のリバイバルなのかもしれないです。

──なるほど。「Time To Tell」はHoneydewのこれまでの集大成というだけでなく、Chimp Beams含め、ある意味ケイゴさんの音楽のキャリアの集大成的な面もあると言ってよいですか?

まだまだ先があるって思ってます。キャリアの集大成というにはまだまだ足りないし。でもこのアルバムで色々新しい事をやったので、Honeydewが今後どんな方向にでも行けるという突破口になったんじゃないかな。

──ムーディな”Powder Snow”から、”Egyptian Wind”の静かなアコースティック・ギターのイントロに繋がり、激しい”Highway Cowboy”へ。柚木さんならではの世界が、Honeydewの音楽の中で活かされていると思います。

“Egyptian Wind”は少しダブっぽいんですよ。僕的にはChimp Beamsのギタリストとしての自分を出した感じ、そしてEL-MALOもデビューシングルがアシッド・ジャズ、ダブなんかのインストなので柚木さんと僕で良い化学反応が出るのではと思いましたね。”Requiem”に関してはEL-MALOのアルバム「Super Heart Gnome」のスキット曲(ショートソング)的な雰囲気が出てると思います」

──柚木さんとは、ケイゴさんはライヴでは過去Honeydewや、Hungrymen(ケイゴさんが参加する別のバンド)で共演をされていますが、今回レコーディングで柚木さんと一緒に仕事をして如何でしたか?

とにかく天才というか。即興で驚くくらいカッコいいモノを作る人です。キーボードで遊んでるだけで衝撃的なカッコいいモノを演奏してくれちゃいます。”Requiem”はそれこそ全トラック即興で一発録音ですから!

── 一発録音ですか!凄いですね! “Highway Cowboy”の原曲は、「Don’t Know Where」に収録されたインストの”Turbo Nitro”ですが、これに柚木さんのヴォーカルを加えてアレンジしようと提案したのは誰ですか?

僕です。しかし凄いのは柚木さん作曲の歌のメロディです!これは楽器全部録音した後に柚木さんがヴォーカルの仮録音をしにウチに来た時にラララとか適当な言葉でメロディをつけたんですが、本当にかっこよくて。適当に英語で歌ってて、その言葉の響きとかをモチーフに僕が後から英詩をつけました。

──ケイゴさんの若い頃からのヒーローである柚木さんに、自作の曲を歌ってもらうのは感慨深かったのではないかと思いますが?

もちろんです!最近表立った大きな活動は少ないにしても、僕の中ではカリスマ性を持ったロックスターで憧れですから。こんなに公私でお世話になっていても未だ僕のヒーローです。EL-MALO知らない若い世代にも”Highway Cowboy”もEL-MALOも聴いてもらいたい。ビックリするくらいカッコいいから。

Secret

──”Secret”もHoneydewのライヴで長きに渡りプレイされている曲ですが、メロディアスで素晴らしい仕上がりですね。以前、ケイゴさんがこの曲はライヴで演奏するのが難しいと仰ってましたがそのことについてもう一度説明して頂けますか?

とてもシンプルでストレートなアレンジゆえグルーヴを出すのが難しいというか。わかりづらい例えかもしれないけどRolling Stonesのようなグルーヴなんですよ。ストレートであっても、Stonesのような身体が動くダンサブルな感じを表現するのが難しいんです。

──また、ケイゴさんはライヴと、レコーディングの曲とは別に考えたいと仰っていました。”Secret”はその例の一つで、ライヴのアレンジと全く異なっていますね?

ギターと歌でやっている事は同じだけどサウンド面でShimmyさんのサウンドアレンジがライブとは全く事なる雰囲気を作ってくれました。凄く気に入ってますよ!

Sweetest Memory

──”Fireworks”のリプライズといえる”Sweetest Memory”は、これまでのHoneydewの3ピースのロック・バンドというイメージとは異なる、その曲名通りの甘いメロディを持った曲になっていますね。この曲をはじめとして、アルバムの要所でプログラミングを取り入れているのは清水さんのディレクションでしょうか?

プログラミングを入れようと思ったのは僕です。Flaming Lipsにハマってたので打ち込みやろうかな?と思いまして(笑)
Shimmyさんには、音やエフェクトなどの方向性や曲順、ジャンル的にごちゃごちゃしてる楽曲をアルバムとしてまとめて頂きました。録音は自分達で行ったので、清水さんとの共同プロデュースというクレジットになっています

When I See Your Eyes

──”When I See Your Eyes”は、演奏、メロディ、アレンジと非の打ち所がない名曲と思います。ギター・プレイは勿論、ケイゴさんのヴォーカルもこれまでのベスト・ワークのひとつだと思うのですが?

この曲は3人でジャムって即出来てしまった曲なんです。コード進行は最初から最後まで1つしかないシンプルなものだけど、歌のメロディを徐々に変えて行くという手法でシンプルに聴かせないという。歌はそうですね、1stよりも成長したと思いますね。

──1stアルバムの時のインタビューでは、ケイゴさんからヴォーカルの録音に悔いが残るというコメントがありました。今回はヴォーカルの出来について如何ですか?

僕は元々NYの音大でギターを学んだし、それ以前も以後も含めずっとギタリストとして活動してきました。だからヴォーカルというものは今でも学んでいる途中です。ただ声量と表現力はアップしたのではないかな。歌を人に伝えたいという気持ちも大きくなってきました。

Clock Is Ticking Slower Today

──”Clock Is Ticking Slower Today”も、Honeydewの音楽の新しい側面を打ち出した曲といえると思います。エンディングを飾るに相応しい美しい曲ですね。以前、ライヴでこの曲を一度聴いたことがありますが、プログラミングをフィーチュアした全く違うアレンジが面白いです。ライヴでのHoneydewのサウンドと最も異なる1曲と思います。

先に打ち込みでこの曲を作ったので、2度だけライブ演奏した時はバンドアレンジにしました。ロック好きの人には打ち込み否定派の人もいるけど、僕は打ち込みには打ち込みのカッコよさがあると思っているタイプなのでアルバムは生演奏が全てではないと思ってます。

──ライヴでは今後もあくまで3ピースに拘りますか?いつかキーボーディストを入れて、「Time To Tell」のアレンジに近いバージョンで収録曲を演奏してみたい気持ちはありますか?

“Clock Is Ticking Slower Today”に関しては自分でシンセ弾こうかなと思ってます。ワンマンだったり出演時間がたっぷりあるライブでは特に。転換が多いイベントだったらバンドアレンジでやります。ゲストキーボーディストとかは機会があれば試してみてもいいですね!

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